こねずみちゃんものがたり

「ロボロフスキーちゃん物語」

■ 第19話〜第25話 ■

←前のページへ  ご案内へ戻る  次のページへ→


第19話

あーもっと、ちゃんとしたシチュエーションで言えよ俺!
「俺の部屋だったら、お前一人くらい増えても全然狭くないぜ」
[でも、そんな事したらゼロに迷惑が]
「二部屋あって余ってるんだ。一部屋お前専用にすればいい。お前用のベッド入れれば」
不動産屋のオヤジかッ。あ、でもベッドはエックスと一緒がいいな・・・
一気に言ってしまった。エックスは黙って俺を見てる。ああッ引かないでくれ。
[ありがとう、ゼロ。そう言ってくれただけでも、俺、とっても嬉しい]
エックスはぽろりと涙をこぼした。
えっ、ええー?な、泣かしてしまった!?
「俺、そんな傷つける事言っちまったか?そ、すまん。そんなつもりじゃ・・・」
[ううん、ゼロが優しくて]
エックスの頬からまた、ぽたりと涙が落ちる。困った。弱った。
これ以上傷口を広げない為にも、俺は黙ってエックスを抱きしめた。
ううむ、男と同居なんて、エックスのプライドを傷つけたかな。でも家賃割り勘のルームシェアしてる奴だっているしな。それでもやっぱ駄目かな。
エックスは素直に俺にもたれて少し泣いた。
[あそこには、とっても会いたくて、とっても会いたくない人がいるんだ]
「・・・・?」
まだ彼女?に未練があるのか・・・。
「仕方がねえよ」
え?という表情のエックスが顔を上げた。
「だからさ、その、エックスの気持ちの整理がついてから帰ればいいのさ」
エックスは悲しそうな瞳のまま微笑んだ。
そして、バイクを停めてある場所まで俺を見送ってくれた。
もう、泣いてはいなかった。
お別れのキスをして、俺は言った。
「さっきの話、俺、真面目だからな。俺といれば何も怖くないだろ?」
今度はにっこり笑ったエックスを見届けて、俺はその場を後にした。

帰りたいのに帰れない、か・・・・
俺は帰りついた自分の部屋で一人考えた。
エックスがそもそも遺跡地区に住んでいるのがその為だとすると、かなり根は深いようだ。
深刻な気持ちのエックスを、軽々しく遊びに誘ったのはまずかったかな。
でも。
エックスともっと会いたい・・・毎日だって。
なんでこんなに熱くなってるんだ俺は。いつもの俺じゃあない。
・・・・・だが、本当は俺もこんなものなのかも知れない。
それにしても、エックスが俺の事を受け入れてくれてよかった。今日だって、かなり強引だったけど。
でも少なくともベッドに入った時は、その気になってくれてた筈だ。
俺はそう思い直した。


第20話

次の日、俺は平常通り出勤した。
いや、昨日のエックスの事を思い出して、いつもより上機嫌だった。
・・・・・流石にニヤニヤ笑いなんかは、していなかったが。
だが。
そんな、朝から幸福な気分の俺に思いもかけない事態が発生した。
「ゼロ、後で私の部屋まで来てくれたまえ」
朝の部隊ミーティングが終了する時、上司のシグマ隊長に声を掛けられた。
言われるまま、俺は隊長室に向かった。ここまでは、特別に変わった事でもない。用件はなんだろうと考えたが、俺だけ呼び出される理由はこれといって思いつかなかった。
隊長室に入るとシグマ隊長が待っていた。

開口一番。
「ゼロ。君はこの件について何処まで知っているのかね?」
「はい?この件とは?」
シグマ隊長は、俺を品定めでもするようにジロリと見た。
「・・・まあいい。君とどうしても話したいと言われてね。私に、ついて来てくれたまえ」
???何だか解らないが、断る理由もないので俺はそのままシグマ隊長の後を追った。

俺はシグマ隊長に促されるまま、本部内の別のブロックへ移動した。
ここの建物はやたら広い。なにしろハンター本部自体、とにかく様々な部署がある。
各地にあるハンターベースも設備は整っているが、擁する部隊の事務やら機材やら隊員用の設備やら、その規模はやはり本部が一番大きいだろう。
その為、俺が入ったことのない場所だってかなりある。
シグマ隊長の目的地を考えたが、事務課オフィスは通り過ぎ、他部隊へ抜ける中央フロアも素通り。
「いったい何処へ行くんだ?シグマ隊長?」
「君はこちらには来た事がないかね?」
俺が頷くと、シグマ隊長は意味ありげに片頬だけで笑った。
「まあ、奉仕活動の一環だとも言えるかな」
「何だってまた?」
奉仕活動?イレギュラーハンターは免除される筈だけどなぁ?
やっと辿りついた場所は、なんとイレギュラーハンター顧問のケイン博士の執務室だった。
これには俺も驚いた。何故って、俺達イレギュラーハンターが年に一度会うか会わないかの人物だ。所謂、お偉いさんって奴だ。
げ!?
ひょっとして、俺、今から叱られるとか!?何かマズイ事したっけか??
思わず立ち止まった俺をシグマ隊長が促す。部屋に入ると、大きなデスクの向こうに座っていたケイン博士が俺を見て、言った。
「ゼロ君、話はシグマから聞いたかね?」
「いえ、何も?」
「私から話すより、直接博士からお話された方が誤解がないでしょう」
シグマ隊長が、ケイン博士に造られたのは有名な話だ。だけれど、その時の一瞬、俺には二人の間に気まずいものが感じられた。喧嘩でもしたのだろうか?
ケイン博士は10秒ほど俺を見つめた後、大きく深呼吸した。溜め息だったのかもしれない。
「エックスの事なのだ」


第21話

俺は驚いた。
何で!?ここで!?エックスが出てくるんだ??
だが、表面上は何事もなかったかのように装い、そのまま話を聞く。俺の反応を見る為のひっかけかもしれないからだ。
事情も解らず驚くさまを見せては、不利になる可能性もある。
有利になる可能性だってあるかもしれないが、博打は手札を見てからするものだ。
俺がそうやって警戒していると、意外にもケイン博士は急にもの悲しそうな顔に変わった。
「頼むゼロ君。エックスに帰ってくるよう、説得してくれたまえ!」

その後のケイン博士の話に俺は驚くばかりだった。
「エックスは今でも私の事を怒っているだろうな。あの子が此処から出て行ってしまって、私は本当に淋しい思いを・・・いや、そう仕向けてしまったのはこの私なんだ」
此処に!?居たのか?エックスがハンター本部に!?
「エックスに伝えて欲しい。何もかも私が悪かった。私の部下達は事態をさらに悪くしてしまった。誤解なんだ。」
「私はただ、エックスが帰って来てくれさえすればそれでいい」
そこでシグマ隊長が念を押すように言った。
「ケイン博士、エックスは身の危険を感じているのでしょう。そのことをはっきりさせないと」
「ああ。そうだ。エックスの安全は私が保証する。・・・もう私の我儘を言ったりしない」
・・・・。何だと。
「その約束、守られる保障は何処にある?」
俺はケイン博士をじっと見た。
話の内容からすると、誤解にしろ真実にしろ、あまり穏やかじゃない。
「・・・私を信じて貰う他ない」
言葉だけ聞くと確証はないようだが、ケイン博士の目には強い決意の光が見えた。
・・・・・演技でなければ。
「話を伝えろという用件は解った。だが説得する理由は俺にはないぜ?」
少なくとも、俺とエックスの間に面識があることまでしらばくれる必要はないようだ。
カマをかけているというより、二人は何らかの事実を掴んで話をしている。
ケイン博士は大きく息をつきながら俺への視線を外した。
「いや、それで十分だ・・・・・頼む」


第22話

ケイン博士の執務室から出た俺とシグマ隊長は、17部隊隊長室に戻った。
俺達は椅子に座り、互いに無言で相手の様子をさぐっていた。
俺は、それでも確かめなければならないことを聞いた。
「シグマ隊長、アンタは誰の味方なんだ?」
シグマ隊長が俺を睨み返す。
「君は?何のためにエックスに近づいた?」
「目的があって近づいたわけじゃない。俺達は知り合って、仲良くなった。それだけだ。」
どうやら、さっきの執務室でのやりとりからすると、シグマ隊長とケイン博士とでは、考えに微妙な違いがあるらしい。
今さらながら、俺にも状況が掴めた。
シグマ隊長も、ケイン博士も、俺が二人の手札を全て知っていると思い込んでいる。実際俺は、自分の手にいつの間にかカードが配られていた事すら知らなかった。
しかもこのカードは4枚白紙だ。残るたった1枚が、エックスのカード。しかし、これは最強の手らしい。
「エックスを監視しているのか?居場所を知っているなら直接連絡して話合えばいいだろ?」
「やっと今の場所を捜し当てたのだ。そうしたら、驚くじゃないか君を連れて帰って来た。エックスは・・・私の事を何か言っていなかったかね?」
「いや」
「そうか」
「本当にエックスの味方か?ケイン博士の為に動いてるんじゃないのか?」
「違う!!」
俺はシグマ隊長の口調の強さに驚いた。この人はいつだって冷静だったからだ。
「君は、エックスが私にとってどんなに大切か解っていない!君などよりずっと以前から、私はエックスの事を知っているんだ!」
「・・・・・それは、つまり」
「いや、恋人などではないよ。残念ながらね」
そこで、シグマ隊長は自嘲の笑みを浮かべた。
「申し込んで、振られたのだよ」
「・・・・・・・」
咄嗟に俺は、何と言って良いのか判らなかった。シグマ隊長は続けた。
「だが、勘ぐってもらっては困る。正直、君に嫉妬しないでもないが、エックスとの仲を裂こうなどとは思わん。・・・・・エックスの住居に随分長い間居たようだが?」
「・・・・・・・」
「茶飲み話でも盛り上がったのかな」
「いいや、エックスと愛し合っていた」
「随分はっきり言うな。自信があると違うものだね」

そして、シグマ隊長は遠くを見るように顔を上げた。
「私とエックスは、家族のようなものだった。人間ではないから妙な構成だがね。エックスもそう感じていてくれていた。だからこそ、私は振られたのさ」
「なぜ判る?」
「エックスにとっては肉親に迫られたようなものだったんだ。私はその瞬間エックスが深く傷ついたのが解った。気づくのが遅すぎたがね」
まさか、シグマ隊長に限ってとは思うが・・・エックスは強引に?
怒りに俺は立ち上がりそうになった。
だが、俺だって最初の夜・・・・・・


第23話

俺は熱くなっていた。
だが、これがシグマ隊長の作戦かもしれないと心を静めた。
だいたい、そんな真似をしたなんて自分から言うのがおかしい。
いや、エックスの所有権を主張していたんだったか・・・
「アンタこそ、エックスの何が解っているっていうんだ?エックスは泣いてたぞ」
俺が思っていた以上に、この攻撃は痛烈に効いたようだった。
「帰りたくても、もう帰る場所がないって言ってな。誰がそうしたんだ?アンタ達じゃないのか。それを今更帰って来いだって!?」
シグマ隊長は無言で俯いた。
俺は自分で言っておきながら、ショックを受けていた。
この人のこんな姿が見たいんじゃない。
エックスを酷い目にあわせたなんて嘘だ。
そう叫びたかった。
でも・・・
俺は席を立って、隊長室の扉にゆっくりと向かった。
「待ってくれ、ゼロ」
「何だ?隊長?」
「エックスは本当にそう言ったのかね」
「ああ」
「・・・帰りたくなどないと言っているわけではないのだな」
「そうだ。でもある人とはもう会いたくないとも言ってたぜ。それがアンタかケイン博士かはわからないけどな」
そう、やっと話が繋がった。エックスだってシグマ隊長のことが好きだったわけだ。多分今も心のどこかで。
でもそれは恋愛感情といったものではなかったんだ。
シグマ隊長の表情がほんの僅か緩んだようだった。
「ああ・・・エックスは優しいからな・・・ケイン博士も私も結局つけこんだのだ」
え・・・まさか?
俺の顔色が変わったのをシグマ隊長は見て取った。
「いや、安心したまえ。ケイン博士は、そう言う意味では紳士だし、もう高齢だよ。・・・・そうか、エックスは君にもまだ話していない事があるようだな」
しまった!
情報不足のまま話に臨んでいることを悟られたかと思ったが、シグマ隊長の反撃は返ってこなかった。
「恋人との寝物語に話しても面白くなかろう」
俺は隊長室を後にした。
もっといろいろ聞き出したかったが、これ以上食い下がるのは無理があった。
俺はデスクワークをするつもりで自分の机に向かったが、何も手に付かない。
ああ、無性にエックスに会いたくなった。
昨日の今日で、会いに行ってもいいだろうか・・・・・


第24話

仕事はすっかり諦めて、机に足をのせて考え事をしていると、同僚が声をかけてきた。
「オッス!ゼロ。油なんか売ってんなら、俺に何か奢れ。販売機コーナー行こうぜ」
「どういう理屈だよ。奢らねぇけど、行くぜ」
一番近くの販売機コーナーは、結構混んでいたので別棟へ行った。
そこへ、意外な人物が現れた。
「よっ!景気はどないや?特A級ハンターさん」
「なっ!ダイナモ!?ここで何してやがる!?」
「言うとくけど、脱獄ちゃうで。それやったらコワ〜イゼロさんの面なんか見んと疾うにおさらばや」
「・・・お前、いつから保釈金が払えるほど大金持ちになった?
ダイナモの場合、罪は軽くても常習犯だ。今のところ、保釈金は犯罪暦毎に上乗せされる。相当な額の筈だ。
「へへへ。捨てる神あれば拾う神ありてね」
誰かが保釈金を肩代わりした?それとも司法取引?
コイツ・・・何握ってやがる?
俺の突き刺すような視線もどこ吹く風と、ダイナモはヒラヒラと手を振った。笑顔付きで。
「ほんじゃ、さいなら〜」
悔しいが、正規の手続きを受けているならどうしようもない。
くそ。今日はなんだってこう次から次へと・・・・

勤務明け、結局俺はあの遺跡地区へ向かった。
今日は、いつものパトロール経路からとは違う方角から遺跡地区に入った。
エックスに会えたのは、パトロール中のルートだったからだが、いつもの場所にベースから行くには、そのルートは少し遠回りな気がしたからだった。まあ実際には、遺跡の配置なんかであまり変わらないかもな。
ただまっすぐな道の向こうから、遺跡研究者のトラックらしき車輌が何台か走ってきた。移動中か。
機材を積んだ車輌と、荷台に研究者やその助手らしい幾人かが乗り込んで、なにやらぺちゃくちゃしゃべっている車輌の二台。
賑やかなこった。
トラックに貼ってある許可証も本物のようだ。
と、仕事癖でそこまで確認して、その中に見知った顔を見つけて俺は大いに驚いた。
「おいっ!エックスじゃないか!?」
後ろからイレギュラーハンターに大声で呼び止められて、トラックは急停止した。
あ、そんなつもりじゃなかったのに。まあ、結果オーライか。
「どうかしました?」
運転手が窓から心配そうな顔を出した。
「いや・・・すまない。俺の知り合いが乗ってたから、ちょっと声をかけただけなんだ。なんでもない」
とたんに運転手は笑顔になった。解り易い。
「なあんだ!びっくりしちゃったなぁ」
「ハンターさん。どなたとお知り合いかな?」
いかにも研究者風な人物が助手席から尋ねた。
「え、あ・・・荷台の、青い子だけど」
「ああ!エックス君のお友達。ひょっとしてお迎えに来てくれたのかな。この先の私達の研究棟・・・と言っても事務所みたいな所ですがね、そこでお茶でもどうです?」
ひとまず俺は承諾して一行についていった。第一、エックスがこっちにいるんじゃどうしようもない。
思ったよりも結構な距離を走った場所に、その研究棟はあった。
この区域は担当じゃないので、来たのは初めてだ。
「どうぞ」
さっきの研究者氏が、事務所?でエナジー缶を振舞ってくれた。
「あ、この銘柄・・・・」
エックスに貰ったのと同じだ。
「ほう、お気に召しましたか?私はこの味が大好きなんですが、好みが分かれるようでしてねぇ・・・」
そう言って彼はにこにこしながら、尋ねもしないのに色々話し始めた。
「いやあ、エックス君がここまでどうやって通っているのか、ひそかに心配していたんですよ。一人じゃ無用心ですし。バスも使っていないようだし・・・でもハンターさんがついていれば大丈夫ですね」
え、通ってる・・・・・・!?
「彼、調整期間中みたいだからどうしようかと思ったんですが。こまごまとよく働いてくれるし。こっちの分野に進んでくれるといいんですがねえ」
調整期間??
「そうすれば、助手として経費も下りるのですが」
「まあ・・・その、エックスにも都合とか・・・・」
「ええ、もちろんですね。ああ、もうこんな時間!おぉーい、エックス君を呼んで来てくれたまえ」
助手らしき人物が、エックスを伴ってやってきた。
俺の顔を見て、エックスは少し不安そうな顔をした。
「エックス。家まで一緒に帰ろうか」
俺はなんとなく無難な言葉を選んだ。
エックスは、こくんと頷いた。


第25話

俺達は研究棟を出た。エックスが幾人かに、ばいばいと手を振った。
俺のバイクに二人乗りして行くか・・・・
ん?
「エックス、バイク乗った事、あるか?」
ぷるぷると首を振る。
「そっか・・・じゃスピードあんまり出さないようにするからさ」
俺の前にエックスを乗せて、後ろから支えるように座り、エンジンをかけた。
エックスが小柄なので前方の視界もさほど遮られない。
このバイクが今まで記録した事のない、超ノロノロ運転で発進した。
走り出して安定してみると、これも結構悪くない。
エックスはと見ると、怖がるというより、もの珍しそうにきょろきょろしている。
なんだか楽しくなってきた。
「バイクどうだ?」
エックスは俺に視線を向けて、にこっと笑った。ちょっと位置が苦しいが、どうやら気に入ってくれたらしい。
「ちょっと、その辺、走って行こうか」
エックスがこくっと頷いた。
そんな気で見れば、この遺跡地区にも観光ツアーがあるくらいなので、風景はなかなかのものだ。
もっとも今までは、物好きな連中もいるもんだと思っていたが。

繊維をひっぱり切ったような白い雲は多めだが、空は晴れていて、その青と白茶けた砂の色がくっきりと鮮やかだ。
パトロールしていた時は視界もセンサーも、何か動くものを捕らえようとそればかりで、風景として見ていなかった」らしい。
遺跡の建物群を抜けて、見晴らしの良い砂地に出た。
市街地区が遠くにそびえている。
一休みのつもりで、バイクを停めた。
エックスはそのまま、シートにまたがって市街地区を眺めていた。俺もそちらを見る。
そっと後ろから抱きしめると、エックスは俺に軽くもたれかかってきた。
シチュエーション、ちょっと良いんじゃないか?
「このまま、あそこに攫っていこうかな」
腕の中の体がびくっと動いた。
「・・・ごめん。そんな事しやしない。ちょっと言ってみたかっただけだ」
ふう。本当はちょっとそんな気分だった。
もっとも、ハンター本部なんかに連れて行ったりしない。そんな所より・・・・
向こうをむいたままのエックスに頬を寄せて俺は言った。
「今日、シグマ隊長とケイン博士に呼び出された。お前に帰って来てほしいだってさ」
まったく!!
「勝手だよな。あんな所、帰んなくていいからな!」
エックスはひどく驚いた様子で、俺を振り返った。
「なんだ?・・・あぁ、俺がこんな事言うの、変か?」
緑の瞳が肯定すべきか否定すべきか迷っている。情報ボードに何か書こうとしはじめた。
「お前の部屋に戻ってから話そう、エックス・・・」
俺はエックスの頬から首筋にかけてキスをした。抱きしめた胸から、腰へと愛撫する。
エックスは動きを止め、俺からの刺激を味わっていた。
もっとしてと、いわんばかりの伸ばした首筋が俺を誘う。
はぁ、と小さなためいきがこぼれた。
ああ・・・そういやケイン博士の監視がついてるんだった。どうでもいいや・・・
でも、ここでする訳にもいかない。
「この続きも、な」
エックスはうっとりとした表情で頷いた。


続く

←前のページへ このページのTOPに戻る 次のページへ→

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送