こねずみちゃんものがたり

「ロボロフスキーちゃん物語」

■ 第32話 ■

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俺達は、しばらくそのまま2人で街の灯を眺めていた。

たっぷり良い気分に浸っていた俺の中で、ふと何かが気に障った。
なんだよ、今、すごく良い所なんだ。
ジャマしないでくれ…

ハッとした。

ジャマが…
誰も居ない。
そんな馬鹿な。ここは、いつも賑わっている場所なんだ。
現に、ここに来た時は、恋人達の甘いムードにはまだ早い時刻だったが、散策を楽しんでいる人達がゆるやかに行き交っていた。

頭の中で、アラームが激しく鳴り響いた。
「エックス!来い。」
え?と、なっているエックスの手を引いて、俺は走り出した。
エックスは、傍目にはパタパタと頼りなげだが、実際は俺と変わらないスピードでついて来た。

何だか知らないが、『罠』の気配がする。
現実の情報を分析して、不安な要素を考える。
ハンターの俺達は、毎日やっている事だが、今日はとにかくその作業がもどかしい。

考えるより、先に俺のセンサーが反応した。
公園内に、戦闘用レプリロイドの反応が数体…いや、確実にコイツ等はハンターだ。

どうする?

真っ先に考えられるのは、エックスを極秘に追うイレギュラーハンター達だ。
だとすれば、 相手も派手な戦闘は仕掛けてこない筈だが、この公園の入口を封鎖したのだろう。

闘うか?

エックスを守る為なら、もちろん俺は闘う。
だが、イレギュラーでもない奴らと闘うのは、実際面倒な事だ。
勝つ自信はあるが、相手を破壊せずに済むだろうか?仲間の俺が言うのもなんだが、ハンターは鼻っ柱が強い。『勝つまで諦めない』タイプのハンターだと話がやっかいだ。

「エックス、あそこの俺のバイク見えるか?」
エックスが、こくりとうなずく。

「よし、歩道を通らず、草の坂を走って、駐車場の上の木からバイクの所に行く。ついて来れるな?」
エックスは、やはりうなずいて、しっかりついて来た。
俺が先に行って、その同じルートを通るだけだから簡単だと思ったが、エックスの機動性が高くてほんとに良かった。
エックスが木につかまっている間に、俺は一足先に駐車場に飛び降りた。
ガシャン!と着地音が響く。
バイクを見張っていた奴が、俺に向かって何事か言おうとした。
俺は有無を言わさず、全速力で近づくと、思い切り素手でぶん殴った。
「がっッ!?」
ちょっと気の毒だが、右頬にパンチを喰らったそいつは、横へふっ飛んだ。
あと、近くに3体。別の方向から2体が近づいて来ている。
2体を交互にかわしながら、残る1体に渾身のキックをお見舞いすると、とりあえずバイクの周りが手薄になった。
「エックス!バイクに乗って出せ!!」
俺が叫ぶと、バイクの側で不安そうに立っていたエックスが、青ざめた顔でうなずいた。
少し困ったように、あれこれ触っていたが、バイクのエンジンが発動音を出した。
よしっ!

エックスがこっちを振り向く。
「出口へ進め!追いつく。」
俺は、一番軽そうなハンターを1体ひっ掴むと、お仲間の2体に向かって投げ付けた。
ガシャン!
「うわッ」
「痛ぇ!」

そして、頼りなげにバイクを走らせているエックスの後部座席に素早く走り寄り、ひらりと飛び乗った。
このバイクは安定性が高いので、これ位の事では転倒しない。
「エックス、運転大丈夫か?」
と、後ろから聞くと、
エックスはブンブンと激しく首を横に振った。表情が固く緊張している。
「おい、それが危ないぜ。」
俺は、こんな時だが、思わずハハハと笑ってしまった。
公園出口への道端で、運転を交代すると、エックスは発進する前から、ぎゅうぅと俺にしがみついてきた。
「大丈夫だ、エックス。俺が何とかしてやるから。」
そう言って笑うと、エックスはじっと俺を見て、やっと笑った。
エックスの頬に軽くキスすると、俺はバイクを発進させた。


続く

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