こねずみちゃんものがたり

「ロボロフちゃん物語」

■ 第5話〜第6話 ■

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第5話

俺は、いせきちくを歩きまわってみた。
よその町に行く道を探したけど、なかなか見つからなかった。

そのうち、いせきちくから出て、砂の上を歩いているとイレギュラーハンターの人に見つかってしまった。
その日会ったハンターさんはたった一人だったけど、この前の人たちみんなよりも強かったんだ。

さいごにはハンターさんは、俺の攻撃を受けて、地面に倒れた。
はあはあと、とても苦しそうだった。
そのまま置いていけなくて、そこから動けなかった俺は、ハンターさんのバイクから、声がしているのに気がついた。

『・・・せよ!応答せよ!おい、どうしたんだ!?イレギュラーか?』

俺は迷ったけど・・・返事をした。
「あの・・・」
良かった!ちゃんと喋れるうちに言わないと!
『!?誰だ君は?』
「あの、ハンターさん、けがをしています。迎えにきてあげて。」
『わかった。君、イレギュラーはどうした!?君は無事なのか?』

俺はどう答えていいか解らなくて・・・そのまま走って逃げ出したんだ。
俺がけがさせましたなんて言えないよ。俺はイレギュラーじゃないよって言っても・・・信じてもらえないよね。
倒れてるハンターさんの方を振り返ると、びっくりしたような顔をして、俺を見つめていた。
ごめんなさい・・・!

そうして、また、いせきちくに逃げ込んだの。
だって、他に隠れる場所ないんだもの。
そのまま、走って走って・・・。
また、すみっこの場所を見つけて隠れた。
ほんとうは、エネルギーがもう残り少ないから、外でお日さまにあたりたかった。でも、怖くて・・・
どうして俺、ハンターさんと戦っちゃったの?
捕まるのが怖いから・・・でも、けがさせちゃったよ・・・・
涙がぽたりとでた。

その時!
いきなり俺のすぐ近くの地面から、何かが飛び出してきた!
「きゃーーーッ!!」
俺は、あわてて逃げようとした。すると、『それ』から声がした。
『エックス・・・怖がらなくていいんじゃよ。私は君の味方だ。』
よく見ると『それ』は何かのカプセルみたい。中に人が立っていたけど、向こうが透けて見える。きっとどこか遠くから映像を送ってきているんだね。
「あなた・・・誰?ですか?」
『今は答えられんが、君があんまり辛い目にあっているものだから。このカプセルに入ればパワーアップしてあげられるんじゃ。』
「・・・パワーアップ・・・するとどうなるの?」
『今までより楽に戦えるようになる。攻撃力もあがるし・・・』
「そっ、そんなのダメ!!」
『ダメ?』
「そんなことして!ハンターさんが死んじゃったりしたら!・・・ダメ!そんなのっ」
『・・・そうか。エックスは優しい子じゃな。』
「あの、せっかく・・・親切にしてくれたのに・・・ごめんなさい。」
『いや、私が浅はかだったんじゃ。そうだ、この場所に行ってみなさい。』
「え?何があるの?」

『行けばわかる。君が、こんな場所で眠っているのを見るのは辛いんじゃ。』

そう言うと、カプセルは地面に引っ込んでしまった。
あとには、座標がしるされた文字がしばらく点滅していた。

やがて、それも消えると、俺は急に不安になった。

今のは、ぜんぶ夢?

地面にも、なんのあともない。
でも俺は・・・その場所に行ってみた。
夢でも嘘でも良かった。
少し歩くと、そこに出た。
特に何にもないみたい・・・やっぱり夢?そういえば、俺、あの人とお話ししている間はずっと普通に話してた。夢だから?

すると!、

床から何か出てきた!!さっきのカプセルの人?
ううん。今度は、何かの扉?だった。
中に入ってみると、それは誰も使っていないお部屋の入口だった。
どうして、誰もいないのかな?ほこりは少しあったけど、きれいなお部屋だ。
・・・ここ、使ってもいいのかな?
電気も水道も通じていた。誰かが帰ってくるのかな?
その人に怒られても・・・やわらかいベッドで眠りたかった。
そこで、いきなり俺は自分の身体がすごく汚れているのに気がついた!
わぁ!このままベッドに入る所だった!
シャワーを借りて・・・タオルも、せっけんも新品の封がしたままだった・・・俺はベッドに倒れ込んだ。

その日から、俺は勝手にその部屋で暮らすようになったんだ。
あのカプセルの人の部屋だったらいいんだけど。
ここを教えてくれただけでも嬉しかった。

そこから、毎日、いせきちくを探検しては、夜帰ってくるようになった。お水も電気も、そのうち無くなるのかもしれないけど。
安心できる場所ができたせいか、前より、いせきちくの様子がよく解るようになった。
ときどき、ハンターの人や、そうじゃない人に見つかりそうになっては、なんとか、隠れてやりすごした。

それでも、ハンターの人に、また見つかってしまったんだ。
俺は、また、戦って・・・、エネルギーが少なくなって・・・。

あれ?

気がつくと、俺はどこかのベッドに寝ていた。
最初は、イレギュラーハンター本部に連れ戻されたのかと思った。けど、建物のかんじがぜんぜん違うみたい。
俺を助けてくれた人たちは、ハンターの人じゃなかった。
いせきちくを、研究しているんだって。それで、倒れてた俺のことを見つけてくれたって言ってた。
みんなやさしくて・・・わけを尋ねられて、俺はお家を飛び出したことを教授に説明した。
教授はとても偉い人なんだって。ここでも、せきにんしゃをしている。
・・・でも、俺はケイン博士のこともシグマのことも、黙ってた。
帰りたくなかったから・・・ううん、もう、帰れない・・・よね。ハンターさんにけがさせてしまったもの。

教授たちにも秘密にしなきゃ。

俺、イレギュラーだと思われて、嫌われちゃうよ。


第6話

俺は教授のお手伝いをすることになったんだ。
でも、皆んなはお勉強がちゃんと済んでいるから、俺にはわからない難しい事をお話してる。かんたんな本をかりたけど、皆んなはこの中の事より、ずっと難しい事をしている・・・って事がわかった。
「なに。皆もファクトリーから出たての頃は、君とおんなじだったんだよ。」
教授は俺に言って、はははって笑ってた。

「そう言えば、エックス君。住む所はあるのかい?この研究棟にも部屋が空いているよ?」
[あの・・・今は、親切な人が教えてくれた所で・・・えっと、その部屋に誰か帰って来るまで居させてもらおうと・・・]
「誰かの部屋に留守番がわりに住んでるって事かい?」
そういう事になるのかな?
ここの方が、皆んながいて楽しいけど・・・俺がいるのを、もしハンターさんに見つかって、戦うことになったら・・・。
やっぱり、あのお部屋が使える間はやめておこうっと。
そうそう!
俺、生まれて初めて、『お金』をもらったんだよ!!
教授がお手伝いのご褒美に定額カードをくれたんだ!
「給料・・・という程には、研究員ではないから少ないんじゃが。」
教授は言ってたけど、俺は皆んなよりかんたんなお仕事しかしてないし、それなのにお金がもらえるなんて思いもしなかった。
と、言っても俺は、お店にお買い物には行けないけど・・・
あの、町外れのお店までだって、ハンターさんの目が光ってる。
でも、カードが使ってみたくて、研究棟の自動販売機でそっと、エナジー缶を買ってみたんだ。
そのまま飲んでしまうのがもったいなくて、俺は缶を持ってお家に帰った。
いつも研究棟では、皆んなにエナジー缶を配ってくれる。飲まなかったぶんはやっぱりお家に持って帰る。けど、このエナジー缶は特別なんだ。
そのエナジー缶をだいじに持って、帰り道をてくてく歩いていると・・・!!

ハンターさんだ!!
どうしよう!

俺は大きな石の柱のかげにかくれた。
どきどき。気持ちが、どきどきする。
どうしよう。
ハンターさん、俺に気がつかないで行ってしまわないかな。

「おーい!」

!!
ハンターさんが俺を呼んでる!俺のこと、気がついてるんだ!
どうしよう!
でも・・・何故か、俺はそのままかくれていてはいけない気がして・・・。ハンターさんをそっと見た。
赤い色のハンターさんは、怖い顔もしないで俺に話しかけてきた。

・・・?

いつものハンターさん達みたいに俺を捕まえに来たんじゃないの?
どきどき。
赤いハンターさんにお返事がしたかったけど、気持ちがどきどきしてばかりで・・・何て答えていいかも解らない。
ああ、それにお話しするには、もっと近くに行って情報ボードを見せないと。
もっと近くに・・・。
そう思ったけど・・・そう思ったのに、俺はその場から走って逃げてしまった。

お家にたどり着いて、ベッドに寝転がってもまだ、はあはあと息をしていた。
こんなに全力で走る事なかったのに。
まだ、どきどきする。
赤いハンターさん。青いきれいな瞳をしていた。きらきらした長い髪だった。
せっかく優しくお話ししてくれたのに・・・お返事できなかった。
涙がぽたりとこぼれた。俺は、悪い子イレギュラーだからハンターさんとお話しできなかったの?
違うよね?
俺、・・・もう一度あの人に・・・会えたら。そしたら。
そしたら?
よく解らない。俺はどうしたんだろ?
まだ、どきどきするよ。手で胸を押さえてみようと思って、エナジー缶を持っている事に気がついた。
そうだ、これを飲んだら、どきどきがおさまらないかな?
ちょっとづつ、エナジー缶を飲んでみた。
今日、この缶を買って、お家に帰る途中でハンターさんに会った。それだけ。
なのに・・・。
ちょっとだけ落ち着いた。けど、そのまま、長い間どきどきの気持ちは続いたままだった。
俺はもう一度、あのハンターさんに会いたいんだって思った。

こんなに会いたくなるなら、今日ちゃんとお話しすれば良かった。
そう・・・あのハンターさんと戦う事になっても・・・。

俺はそれから、あの赤いハンターさんと会った道を必ず通ってお家に帰る事にしたんだ。
もしも、他のハンターさんに会ってしまったら逃げなくちゃ。と、いう気持ちと、赤いハンターさんが今日はいるかもしれないって気持ちで、帰り道はいつも、どきどきした。
でも、何日も誰とも会わなかった。
このまま、あのハンターさんと会わない方がいいのかな・・・。

でも、その日。その道に、赤いハンターさんを見つけて、そんな気持ちはどこか遠くへ行ってしまった。
赤いハンターさんは、今度も優しくお話ししてくれた。
ハンターさんの仲間から、俺が悪い子イレギュラーだ!って言われてたらどうしようかと思ったけど、俺のこと、聞いてないんだ?よかった・・・

「俺の名前はゼロっていうんだ。」

ゼロかぁ・・・赤いハンターさんに似合ってる。かっこいい名前だね。
「名前は?何ていうんだい?」
俺の名前は・・・。

そうだ!
名前を言ったら!
赤いハンターさんは俺の名前を知らないから優しくお話ししてくれてるんじゃないの!?俺が「エックス」だって言ったら・・・他のハンターさんと同じように戦う事に・・・。
そんなの嫌だよ!
お返事できなくて、俺はまた逃げ出してしまった。

お家に帰った俺は、がっかり落ち込んじゃった。
だって、あんなに、何日も会いたくて、戦ってもいいってくらい決心したのに。
やっぱり、そんなの嫌だよ・・・。
嫌だけど・・・
ハンターさん、ゼロっていうんだね。なんだかどこかで聞いたような、なつかしい気持ちのする名前。あの人は他のハンターさんみたいに怖くなかったよ。あの人と・・・仲良くなれたらいいのにな。
でも・・・どうしたら?
うその名前を言ってみようか?でもなんだかうそだってわかっちゃいそう。
それに、うその名前も思い付かない。

・・・やっぱり、今度こそ。今度こそ、ちゃんとお話しするんだ。それで・・・それで、もし、戦う事になったら。
あの人に捕まえてもらおう。
そうだよ。何で気が付かなかったのかな!
そしたら、ゼロと戦わなくていいじゃないか。
イレギュラーハンター本部へ連れて帰られる間だけでも、お話しできないかな。

とっても、会いたかったんですって・・・言えるかな?


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